8020運動について

「8020（ハチマルニイマル）運動」とは、「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という目標を掲げた国民的な運動です。1989年に日本歯科医師会と厚生労働省が提唱し、長寿社会における“健康で豊かな生活”を支えるための取り組みとして広まりました。
20本という数字には明確な意味があります。人が「自分の歯で何でも噛んで食べられる」ために必要な最低限の歯の本数が20本とされているのです。食べたいものを自由に食べることができることは、栄養の偏りを防ぐだけでなく、脳への刺激や全身の健康維持にもつながります。

しかし現実には、年齢を重ねるにつれて歯の喪失が進む人も少なくありません。その原因の多くは、歯周病や虫歯の進行によるものです。特に歯周病は自覚症状が出にくく、気づかないうちに進行して歯を支える骨が溶けてしまうため、「静かなる病気」とも呼ばれています。こうした疾患を早期に防ぐためには、毎日の丁寧な歯磨きはもちろん、定期的な歯科検診と専門的なクリーニングが欠かせません。

実際の調査データでは、「残っている歯の本数」と「しっかり噛んで食べられるかどうか」には明確な関係があることがわかっています。歯の本数が多い人ほど、食事を楽しみ、健康を維持している割合が高いのです。反対に、歯を失うと噛む力が弱まり、柔らかい食べ物ばかりを選ぶようになってしまい、結果として栄養バランスが崩れたり、筋力や記憶力の低下を招くこともあります。

つまり、「8020運動」は単に歯を残すことが目的ではなく、“自分の歯で食べ、話し、笑う”という豊かな人生を守るための運動なのです。
日々のセルフケアと、かかりつけ歯科医院での定期的なメンテナンスを通して、ご自身の歯を長く大切に使っていきましょう。